a1d1ac72.jpg「ワシはな、人生で初めて土下座したんよ。知っとるか?棟田(利幸)先生に。柔道の世界じゃ知らん者はおらん。四国で一番、西日本でも一番、実力ならば日本でも一番。本物の柔道家です。たしかにワシは八幡浜の時から警察道場で棟田先生にも空手を指導してきた。けどな、逆に柔道やったら、ワシなんてものの三秒も立ってはいられんわ。打撃で人を三秒で殺せますか? 無理。打撃を極めたワシが言うんやから無理です。しかし投げやったら三秒で人を殺せるんです。棟田先生は柔道の猛者なだけやない。警察逮捕術の達人でもあった。空手じゃワシが先生でも、柔道や逮捕術ではワシは相手にもならん。」(by芦原英幸)

当時の極真空手をモデルにした人気漫画「空手バカ一代」に棟田(いま活躍している柔道棟田選手の父)師範をモデルにしたキャラクターが登場し、芦原に簡単にやられる設定になっていた。なにも聞かされていない芦原師範はその内容に驚愕した。

「ワシは梶原先生に凄い柔道家がいるとは言った。けど勝負はしとらんよ。世話になっとると言っただけや。その結果、とんでもない内容になっとる。ワシは悔し泣きしたんよ。その時、初めて棟田先生の家を訪ね、土下座して謝ったんよ。実際は棟田先生がワシの手を引き上げて、土下座させてくれんかったのが本当じゃけん。けどワシは気持ちで土下座した。棟田先生は本物の豪傑じゃけん。そんなことは気にせんでいいと笑ってくれました」(by芦原英幸)

この本、実は買うのを躊躇した。
というのもこの著者は同じく「芦原英幸」を題材にした前著の発売を巡り、芦原師範のご子息で二代目館長英典師範と訴訟になり、さらに著者の主張はちょっと考えられない内容だった。
それでも手にしたのは芦原英幸のカリスマ性と、そして出版が新潮社だったからで、大手の出版社はそんな微妙な人間を使わないだろうという信頼感だ。


芦原英幸正伝

芦原英幸正伝


著 者:小島 一志


販売元:新潮社

発売日:2013-12-20