f0a1c712.jpg写真は「日本の弓術」の完全版ともいえる続編。前作から十年の修行を経て、より掘り下げた内容となっている。
その分、難解さも増している(笑)

「術は術のない術となり、射ることは射ないこと、言い換えれば弓矢なしで射ることとなる。さらに師範は再び弟子となり、大家は初心者に、終局は発端に、そして発端はすなわち完成となる」

そのまま読むなら文章は論理的に確実に破綻している(笑)。いわゆる行間を読み、感性で捉えなければならない。
論理的思考を好む西洋人ならどう受け止めるのだろう。
帯にはスティーブジョブズ愛読書となってるがホントだろうか?(笑)

冗談はさておき、本書では技法を具体的に紹介している。私にとって興味深いのは呼吸法。筋力を使わず呼吸で引くという。著者が師匠の腕を触ってみるとどこにも力が入っていない。

弓射とは
「弓を手に取り→弓をつがえ→弓を高く捧げ→一杯に引き絞って満を持し→射放つ」の五動作。

呼吸法は「息を吸い込んでから腹壁が適度に張るように、息をゆるやかに圧し下げなさい。そこでしばらくの間息をぐっと止めるのです。それからできるだけゆっくりと一様に息を吐きなさい。そして少し休んだ後、急に一息でまた空気を吸うのです。こうして呼気と吸気を続けていくうちにそのリズムは次第に独りでに決まってきます」
「この呼吸法によって、あなたは単にあらゆる精神力の根源を見出すばかりではなく、さらにこの源泉が次第に豊富に流れ出して、あなたが力を抜けば抜くほどますます容易にあなたの四肢に注がれるようになるからです」

弓射各動作は「吸気によってはじめられ、圧し下げられた息をぐっと止めることによって支えられ、呼気によって完了された。その際、おのずから次の結果が生じた」

呼吸によって力を引き出す技法はロシア武術システマにも見受けられ、その呼吸法は腱や靭帯の強化を主眼としていて「セカンドウィンド」と呼ばれる潜在的な予備体力をコントロール、強化するためプッシュアップやスクワットをする。

「呼吸の真価は極限状態でのみ知ることができる」(by「let every breath」)

できる人がいる以上、私たちはできるまで練習するしかありませんね。

「一切を忘れてもっぱら呼吸に集中しなさい。ちょうどほかには何一つなすべきことがないかのように」(by阿波研造)


弓と禅

弓と禅


著 者:オイゲン・ヘリゲル


販売元:福村出版

発売日:1981-11


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