弓術の達人「阿波研造」師範に師事したドイツ人哲学者オイゲンヘリエルの講演録。
「かつては生死を争う戦闘のために習得され修練された術」が「一種のスポーツとして残らず」「精神修養」となった。
「弓術特有の精神」は「血なまぐさいことに使われなくなってはじめて、その精神を完全な清浄のうちに培うこと」を「可能」にした。「この精神は後にこじつけたものではなく、昔から弓術に結びついていた」
実戦から離れることにより、見えてくることもあるようだ。著者はこれを「大乗弓術」と呼ぶ。
「日本のあらゆる術はその内面的様式からいえば「禅」と呼ばれる思弁的(実践を伴わない)でない仏教に遡る」
「弓と矢をもって外的に何事かを果たそうとするのではなく、自分自身を相手にして内的に何事かを果たそうとする意味を持っている」
それは「目的そのものではなく」「目的に至る道」であり、「無術の術」に至れば、的は自身と一体化し、そして自身を射る。
相手と戦うにしても、目や皮膚などからの感覚情報を脳や神経が整理し身体を動かしているので、事象的には自分の中に作り上げられた相手と戦っているわけで、それは自身と戦うに等しいのかもしれない。
「有から無に入る道は、必ず有に復ってくる。それは射手が復ろうとするからではなく、投げ返されるからである」
「日本人にとって言葉はただ意味に至る道を示すだけで、意味そのものは」「行間に潜んでいて」「はっきり理解されるようには決して語られも考えられもせず」「経験した」「人間によって経験されうるだけである」
「無」の境地を伝えたい師範に対し、言葉を無上とし科学的に把握したいヨーロッパ人として疑問を投げかける。
「無」といっても、矢を放つのは「私」ではないか?「的を狙うな」といっても、狙わずにどうやって当てる?
私事で恐縮ながら、厚顔無知な私も単刀直入な質問をよくしている。なぜできる?どうやったらできる?。いつぞやは高名な師範から「君はアメリカ人みたいな質問をするな(笑)」とお咎めを受けたほど。
本書の師匠と弟子のやり取りはどことなくユニークで私はニヤリとせずにいられなかった。
著者が師の教えを受け入れるきっかけとなった暗闇での射のくだりは武を志すものすべての心に語りかける。
PS.先のロンドン五輪で女子が活躍したのをうけてアーチェリーがちょっとしたブームだとか(^^)
日本の弓術 (岩波文庫)
著 者:オイゲン ヘリゲル
販売元:岩波書店
発売日:1982-10-16
クチコミを見る
「かつては生死を争う戦闘のために習得され修練された術」が「一種のスポーツとして残らず」「精神修養」となった。
「弓術特有の精神」は「血なまぐさいことに使われなくなってはじめて、その精神を完全な清浄のうちに培うこと」を「可能」にした。「この精神は後にこじつけたものではなく、昔から弓術に結びついていた」
実戦から離れることにより、見えてくることもあるようだ。著者はこれを「大乗弓術」と呼ぶ。
「日本のあらゆる術はその内面的様式からいえば「禅」と呼ばれる思弁的(実践を伴わない)でない仏教に遡る」
「弓と矢をもって外的に何事かを果たそうとするのではなく、自分自身を相手にして内的に何事かを果たそうとする意味を持っている」
それは「目的そのものではなく」「目的に至る道」であり、「無術の術」に至れば、的は自身と一体化し、そして自身を射る。
相手と戦うにしても、目や皮膚などからの感覚情報を脳や神経が整理し身体を動かしているので、事象的には自分の中に作り上げられた相手と戦っているわけで、それは自身と戦うに等しいのかもしれない。
「有から無に入る道は、必ず有に復ってくる。それは射手が復ろうとするからではなく、投げ返されるからである」
「日本人にとって言葉はただ意味に至る道を示すだけで、意味そのものは」「行間に潜んでいて」「はっきり理解されるようには決して語られも考えられもせず」「経験した」「人間によって経験されうるだけである」
「無」の境地を伝えたい師範に対し、言葉を無上とし科学的に把握したいヨーロッパ人として疑問を投げかける。
「無」といっても、矢を放つのは「私」ではないか?「的を狙うな」といっても、狙わずにどうやって当てる?
私事で恐縮ながら、厚顔無知な私も単刀直入な質問をよくしている。なぜできる?どうやったらできる?。いつぞやは高名な師範から「君はアメリカ人みたいな質問をするな(笑)」とお咎めを受けたほど。
本書の師匠と弟子のやり取りはどことなくユニークで私はニヤリとせずにいられなかった。
著者が師の教えを受け入れるきっかけとなった暗闇での射のくだりは武を志すものすべての心に語りかける。
PS.先のロンドン五輪で女子が活躍したのをうけてアーチェリーがちょっとしたブームだとか(^^)
日本の弓術 (岩波文庫)
著 者:オイゲン ヘリゲル
販売元:岩波書店
発売日:1982-10-16
クチコミを見る
コメント