服部啓の急逝で波乱の幕を開けた2011年。

3月11日、未曾有の震災。親戚が被災。

その後も様々な出来事があった。

私はといえば、充電に徹しつつ、その実、寝ていたような一年だった。

日々の練習は怠らなかった。技量はレベルアップし続けている。

ところが最近になって、理解が深まるにつれ、実際には全然ダメで、なにもできていなければ、なにも理解していないことがわかってきた。もちろん誰かとの比較でなく、自己との対比。

いわゆる「無知の知」。わかっていないことがわかってきた。知れば知るほど地盤沈下していっている感覚。

私は武術の修行をよく山登りに置き換える。修行が進むにつれ理想が高くなり、目指す山の頂上が高くなっていく。ただ、現在地が下がりはしないので登るにつれ視界は開けていく。
対して地盤沈下は視界は開けていかない。歩みは進めているが場所そのものが下がっていく。

この2、3ヶ月はジレンマに陥った。練習が嫌になったこともある。はじめての経験で、何日かサボったこともあった。

今、気分的には底を打った感がある。

私はなにも知らないし、なにもできない。

それを受け入れることができる。

理解は深まり続き、また地盤沈下も続くだろう。

でも、どうせなにもできないんであわてることもあるまい。なにも知らないことを知りつつある。もしかしたら、もはや知りたいとも思っていないかもしれない。

日々坦々と歩むのみ。

無知の知。

それも楽しい。

年の瀬にひょんなことから数年の気掛かりであった急逝した親友のお墓に手を合わせることができた。

袖すりあうのも他生の縁。

人生は旅を行くがごとく。


今年も一年間、お世話になりました。

どうぞ、良いお年をお迎えください。